2014年5月5日月曜日

Say Goodbye to Taiwan

〜台湾に「さようなら」を言おう〜

ジョン・J・ミアシャイマー


攻撃的現実主義者であるシカゴ大学のミアシャイマー教授が発表した台湾問題に関する論文の翻訳から主要部分を抜粋し転載します。

私は、東アジア地域における台湾問題は、台頭する中国への対応を考えるとき、政治的・地政学的・軍事的に極めて重要な問題であると考えます。

しかし、それにもかかわらず、日本における台湾問題の扱いは、対中外交上、極めて重要であるがゆえに、危険物と見なされ、敢えて触れようとする者は皆無です。

このような状況の下、今回、ミアシャイマー教授がThe National Interest誌に掲載した論文は、当事者である台湾人はもちろんのこと、中国との間で尖閣問題を抱える日本人にとっても衝撃的な内容であり、また、攻撃的現事実主義の基本的考え方を理解する上で非常に参考となるものです。

なお、本記事の原典及び翻訳転載元は下記のとおりですが、記事に関するご意見やお問い合わせ等は、本ブログ作成者にメールでご連絡いただきますようお願いします。

・原典:John J. Mearsheimer ,“Say Goodbye to Taiwan”,The National Interest<http://nationalinterest.org/article/say-goodbye-taiwan-9931?page=show>

・翻訳転載元:奥山真司「地政学を英国で学んだ『ミアシャイマーの「台湾さようなら」論文』<http://geopoli.exblog.jp/22525129/> 


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Say Goodbye to Taiwan
台湾に「さようなら」を言おう〜
ジョン・J・ミアシャイマー

・「中国の台頭が続いている」という事実は、台湾にとって何を意味するのだろうか?

・台湾が本物のジレンマに直面するのは数十年先の、経済成長が(確実とはいえないが)続いて、今日よりもはるかに強力になった中国に直面した時の話だ。
・ここで本当に重要となる質問は、「バランス・オブ・パワーが台湾とアメリカにとって極めて不利に傾き、中国が現在よりも相対的に遥かに多くのパワーをコントロールしていて、しかもアメリカと同じ規模の経済力と軍事力を備えてしまっているような未来の世界で、一体何が起こるだろうか?」というものだ。

・つまりこれは、中国が現在よりもはるかに制約を受けていない状態にある世界、ということだ。

・これは私の確信である。中国の台頭の継続は、台湾にとって大きな結果をもたらすことになり、しかもそのほとんどが台湾にとって悪いものになるはずだ。

・中国は今日に比べて遥かに強力になるだけでなく、しかも台湾を自国の領土の一部にすることについては、引き続き真剣に取り組んでいくはずなのだ。

・さらにいえば、中国はアメリカが西半球で行ったのと同じようにアジアを支配しようとするだろう。これはつまり、アジアにおける米軍のプレゼンスを(消滅させるまでには至らないにしても)低下させようとし続けるということだ。

・時間は台湾の味方ではないのだ。

・以下でこれから述べるのは、アメリカと中国、そして台湾の間で一体何が起こるのかを予測したものである。

ほとんどの台湾人にとって理想なのは、主権を得て国際的にも「独立」を承認されることであろう。これが魅力的なのは、過去の65年間で台湾人の間に(中国とは異なる)「台湾」という強力なアイデンティティが生まれたことに原因がある。

・自分たちのことを「台湾人」とみなす人々は、自分たちの国民国家を当然欲しいと思うものであり、中国本土の一つの「省」になることには。ほとんど意欲を示していない。
・ところが台湾は、予見できる将来において、公式な独立を獲得することはない。その主な理由は、本土の中国が、そのような結末を看過するわけがないことにある。

・実際のところ、中国は「もし台湾が独立を宣言したら戦争を仕掛ける」と明言している。2005年に制定された「反分裂国家法」では、台湾が独立への動きを示した瞬間に「(北京)政府は非平和的手段やその他の手段をとる」ということを明らかにしている。

・さらに注目すべきことは、アメリカも台湾を主権国家として認めていないということであり、オバマ大統領によれば、ワシントン政府は「一つの中国という政策を完全に支持」しているのだ。

・したがって、台湾が予見できる将来にわたってせいぜい望めるのは「現状維持」であり、これはつまり「事実上の独立状態」であるということだ。

・起こりうる中で最悪のシナリオは、北京の主導による中国との統一である。

・もちろん統一というのはさまざまな方法で起こりうるものだ。おそらく最もマシなものとしては、台湾が現在の香港のように、かなりの自治的な状態を保った形での統一であろう。北京の主導者たちは、このような解決法を「一国二制度」と言っている。

・ところがこのような解決法は、台湾人には受けが良くない。

・端的にいえば、事実上の独立状態というのは、その政治的な状況がどのようになろうとも、「中国の一部になる」よりは、はるかに好ましい選択肢なのだ。

・ところが台湾にとって決定的な質問は、「台頭しつつある中国に直面しても、統一されるのを避け、事実上の独立状態を維持できるのか?」というものだ。

・では中国の側から見た場合はどうであろうか?彼らは台湾をどのように考えているのだろうか?

・中国の台湾についての見方には、二つのロジックがある。一つはナショナリズムと共に発展したものであり、もう一つは安全保障に関係したものだ。

・ところがこの二つのロジックは、最終的には同じ結論に到達してしまう。それは「中国と台湾の統一」である。

・まずナショナリズムの方の話だが、これは非常にわかりやすい。中国は台湾を自国の一部にすることについて真剣に取り組んでいるからだ。

・中国のエリートたち(と国民)にとって、台湾は決して主権国家になってはいけない存在だ。この場所は古代から中国の聖なる領土の一部なのであり、中国がまだ弱かった1895年に、憎き日本に取り上げられた場所だという。

・そしてこの島は、再び中国の一部として統合されなければならないのであり、2007年に胡錦濤は第17回全人代で「両岸は中国国家の再生の過程で再統一される運命にある」と述べている。

・中国と台湾の統一というのは、中国側の民族主義的なアイデンティティの中核をなすものの一つであって、この問題に関して妥協は全く許されないものなのだ。その証拠に、北京政府の正統性(レジティマシー)の中には、台湾の独立国家化を防ぎ、将来的には統一することを確実にする、ということが含まれているのだ。
・安全保障に関係したロジックのほうは話が別である。そしてこれは「中国の台頭」という話と切り離すことができない。

・「時間を経て強力になるにつれ、中国はアジアでどのような態度を見せるようになるのだろうか?」というものだ。そしてそれに対する答えは台湾にとっても明らかに大きな結果を伴うものだ。

・台頭する中国が周辺国やアメリカに対してどのような態度をとるのかを予測するための唯一の方法は、大国政治の理論を使うことだ。

・われわれが理論に頼らなければならない主な理由は、われわれにはまだ起こっていない「未来」についての事実を持っていないからだ。

・われわれは世界政治においてこれから何が起こるのかを見極めるためには、理論に頼る以外の方法は残されていないのだ。

・私の提唱する国際関係の現実主義の理論によれば、国際システム(the international system)の構造によって、安全保障に懸念を持つ国々は互いにパワーをめぐって競争に駆り立てられる、ということになる。

・そしてその中の主要国の究極のゴールは、世界権力の分配を最大化することにあり、最終的には国際システム全体を支配することにあるというものだ。

・これが現実の世界に現れてくると、最も強力な国家が自分のいる地域で覇権を確立しようとする動きになり、ライバルとなる他の大国がその地域で圧倒的にならないように動く、ということになる。

・さらに具体的にいえば、国際システムには大きくわけて3つの特徴があることになる。


・1つは、このアナーキー(無政府状態)のシステムの中で活動している主役は国家であり、これは単純に「国家よりも上の権威を持つアクターが存在しない」ということを意味する。

・2つ目は、「すべての大国が軍事的にある程度の攻撃力を持っている」ということであり、互いに傷つけあう能力を持っているという事実だ。

・3つ目は、「どの国家も他国の意図を完全に知ることはできない」ということであり、これはとくに未来の意図の場合は不可能になるということだ。

・他国が悪意を持つ可能性があり、しかもそれなりの攻撃力を持つ世界では、国家は互いを恐れる傾向を持つことになる。そしてこの恐怖は、アナーキーな国際システムの中に何かトラブルがあっても大丈夫なように国家を一晩中見張ってくれる、夜の警備員のような存在がいないという事実によっても増幅する。

・したがって国家というものは「国際システムの中で生き残るための最良の方法は、潜在的なライバルたちと比べてより強力になることにある」と認識しているものだ。ある国家の力が強ければ強いほど、他国は攻撃をしかけようとは思わなくなるからだ。

・ところが大国というのは、単に大国の中で最強になろうとするだけ(もちろんこれは歓迎すべき結果かもしれないが)ではない。

・彼らの究極の狙いは「唯一の覇権国」(the hegemon)になることであり、これは国際システムにおける唯一の大国になるということを意味する。

・現代の世界において「覇権国」になるということは、一体何を意味するのだろうか?

・いかなる国にとっても、世界覇権国になることはほぼ不可能である。なぜなら、世界中でパワーを維持しつつ、遠くに位置している大国の領土にたいして戦力投射することはあまりにも困難だからだ。

・そうなると、せいぜいできるのは、自分のいる地域で圧倒的な存在になり、地域覇権国(a regional hegemon)になることくらいなのだ。


・地域覇権を達成した国というのは、それ以上の狙いを持つものだ。彼らは他の地域にある他の大国が自分と同じようなことを達成するのを阻止しようとするのだ。いいかえれば、地域覇権国というのはライバルを持ちたくないものだ。

・彼らは他の地域をいくつかの大国が林立する状態にしておきたいと思うものであり、これによってこの地域にある国同士は互いに競争し、自分の方に向けられるエネルギーの集中を不可能にしてしまえるのだ。

・まとめて言えば、すべての大国にとって理想的な状態は「世界の中で唯一の地域覇権国になること」であり、現在のアメリカはこの高いポジションを享受できていることになる。

・この理論に従えば、将来台頭してくる中国は、一体どのような行動を行ってくるのだろうか?

・この答えをシンプルに言えば、「中国はアメリカが西半球を支配したような形で、アジアを支配しようとする」ということになる。

・中国は地域覇権を目指すようになる。


・とくに中国は自国と周辺国(とくにインド、日本、そしてロシア)とのパワーの差を最大化しようとするはずだ。とにかく最も強力になって、アジアの他の国々が自分のことを脅せるような手段を持てないようにすることを目指すはずなのだ。

・ところが、これは中国が他のアジアの国々で暴れまわって征服することができるほどの軍事的優位を追及しているということでは(もちろん常にその可能性は存在するが)ない。

・むしろより実情に近いのは、中国が自分に許される行動の範囲を拡大して、それを周辺国に認めさせたいということだ。そしてこれはアメリカが南北アメリカで自分がこの地域の「ボス」であることを認めさせていることと近い。

・また、中国がさらに強力になれば、アメリカをアジアから追い出すことになるのは確実であり、これはアメリカが19世紀にヨーロッパの列強を西半球から追い出したのと同じなのだ。われわれは中国が1930年代の日本がやったように、独自の「モンロー・ドクトリン」を持ちだしてくることを予測すべきなのだ。

・そしてこのような目標は、中国にとっても戦略的な合理性を持つものだ。北京政府は日本とロシアを軍事的に弱めたいと思うものであり、これはアメリカが隣国であるカナダとメキシコを軍事的に弱いままにしておきたいと思っているのと同じである。

・まともな考えを持つ人物であれば、自分のいる地域に強力な国家が位置している状態は避けたいと思うはずだ。その証拠に、すべての中国人は、日本が強力で中国が弱かった過去の2世紀に起こったことを、確実に覚えているのだ。

・さらにいえば、強力になった中国は、自国の裏庭で米軍が活動している事実を受け入れようとは思わないはずだ。

・これと逆にことを考えてみればわかりやすい。アメリカの政策家たちは、西半球に他の大国が軍隊を送り込んできた場合には激怒するはずだ。この外国の部隊は、アメリカの国家安全保障に対する潜在的な脅威と見なされることは確実なのだ。

・そしてこれと同じロジックが、中国にも当てはまる。米軍が自国の玄関口に派兵されていることについて、中国は全く安心できないのだ。モンロードクトリンのロジックに従えば、中国の安全保障は、米軍をアジアから追い出すことによって改善することになる。

・なぜわれわれは中国がアメリカと異なる行動をすると思い込んでいるのだろうか?中国のリーダーたちは、アメリカのリーダーたちよりも強い道徳的観念を持っているのだろうか?より倫理的であろうか?ナショナリズムが抑えめになっている?生き残りにそれほど懸念を持ってない?

・これらの疑問に対する答えは、当然のように、すべて「ノー」だ。


・だからこそ、中国はアメリカを真似して、地域覇権を目指す公算が高いことになる。

・この安全保障関連の話は、台湾にとってどのような意味を持っているのだろうか?

・その答えは、「中国には、少なくとも台湾をアメリカから切り離して中立化させようとする、強力な戦略面での合理性がある」というものだ。

・ところが中国が望む最大の目標は、台湾を中国の一部にすることであり、時間の経過とともに国力を増せば、この目標を確実に追及することになるだろう。

・統一は2つの重要な点において、中国にとって戦略的に有利に働くことになる。


・第1に、北京政府は台湾の経済面や軍事面の資源を吸収し、アジアにおけるバランス・オブ・パワーをさらに中国に有利な方向へシフトさせようとする。

・第2は、台湾を中国沿岸の沖合に浮かぶ「巨大な空母」にしてしまうことだ。このような空母を獲得することができれば、中国の軍事力を太平洋西部に対して投射する能力が強化されることになる。

・端的にいえば、ナショナリズムとリアリストのロジックによって、中国には「台湾の事実上の独立状態を終わらせ、中国に統一してしまいたい」という強力なインセンティブが働いていることが見てとれる。

・これは、とくにアジアにおけるバランス・オブ・パワーが中国へとシフトしつつあり、台湾が中国からの攻撃から守ることができなくなるまでそれほど時間がないという意味では、台湾にとっては明らかに悪いニュースだ。

・したがって、ここで明らかに問わなければならない質問は「アメリカは台頭する中国に直面する中で、台湾に安全を提供することができるか?」というものだ。これをいいかえれば、「台湾はアメリカに安全保障を頼ることができるのか?」ということにもなる。

・アジアにおけるアメリカの目標と、それが台湾にどのような関係性を持つのかについて考えてみよう。

・地域覇権国は、他の地域で他の大国が地域覇権国になることを阻止しよう必死の努力をする、ということはすでに述べた通りだ。そしてすべての大国にとって最高のシナリオは、国際システムの中における唯一の地域覇権国になることである。


・結論としては、アメリカは賢明な戦略的理由によって、西半球における覇権を維持するために百年以上もがんばってきたのだ。地域覇権を達成してしまったために、今度は他の大国がアジア、もしくはヨーロッパを支配するのを阻止するために多大な努力をしてきたのである。

・したがって、もし中国がアジアを支配しようとした場合に、アメリカの政治家たちがどのような反応を示すのかはかなり明確だ。アメリカは中国の封じ込めのために努力するだろうし、最終的にはアジアを二度と牛耳ることができないレベルまで弱体化させようとするだろう。

・よって、アメリカは実質的に、冷戦時代のソ連に対するようなやり方で中国と対峙することになる公算が高い。

・中国の周辺国は、その台頭を恐れるのが確実であり、彼らも中国が地域覇権を達成するのを防ごうとして、出来る限りのことをしてくるはずだ。

・結局のところ、彼らは中国の台頭を阻止するために、アメリカ主導の「バランシング同盟」(balancing coalition)に参加することになるだろう。これは冷戦中に、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本、そして中国でさえも、アメリカ側についてソ連に対抗した構図と似ている。

・ここまでの話を踏まえると、この状況に台湾をどのように当てはめることができるだろうか?

・蒋介石率いる国民党が中国本土から逃れた冷戦初期から、アメリカは長きにわたって台湾と親密な関係を維持しているが、ワシントン政府は、中国やその他の国による攻撃から台湾を守る義務を示した協定によって縛られているわけではない。

・それでもアメリカは反中同盟において「台湾に重要な役割を担ってもらいたい」と思うだけの強力なインセンティブを持つはずである。

・第1に、すでに述べたように、台湾は経済面・軍事面での資源を持っており、ここを獲得できれば、実質的には中国の最も重要な東岸の沖合の海域をコントロールするための巨大な空母として利用することができるようになる。
アメリカは中国側ではなく、自分たち側に戦略バランスを有利にできるという意味で、台湾の資産を欲しがるはずなのだ。

・第2に、アメリカの台湾へのコミットメントは、この地域におけるアメリカの信頼性そのものと切っても切り離せない関係にあり、これはワシントンの政治家たちにとっても重大な意味を持っている。

・アメリカは東アジアからおよそ9700キロ離れていても、アジアの同盟国たち――とくに日本と韓国――に対して、中国や北朝鮮から脅された場合でも「必ず守る」と必死に納得させなければならないし、さらに重要なのは、彼らに「アメリカの核の傘に頼ることができる」と確信してもらわなければならないのだ。

・そしてこれこそが、アメリカとその同盟国たちが冷戦中に悩み続けた「拡大抑止」の難問なのだ。

・もしアメリカが台湾との軍事的なつながりを断絶したり、中国との危機の際に守れなかった場合には、この地域にある他のアメリカの同盟国たちに強力なシグナルを送ってしまうことになる。つまり、「アメリカにはもう頼れない」ということだ。

・ワシントンの政策家たちはこのような結末を迎えないように必死の努力をするだろうし、「信頼できるパートナー」というアメリカの評判を維持しようとするはずだ。つまりこれは、彼らにとって「何があろうとも台湾を守る」ということになる。

・アメリカには、台湾を中国に対抗するための「バランシング同盟」の一部にしたいと思うだけの十分な理由があるのだが、それと同時に「この関係は長期的には適切なものとはならない」と考えるだけの理由も存在する。

・そもそも次の十年間か、その先のどこかの時点で、アメリカには中国の攻撃から台湾を守ることは不可能になるはずだ。ここで覚えておかなければならないのは、われわれが想定しているのは、今日の中国よりも、はるかに軍事力を高めた中国である、ということだ。

・さらに加えて、地理は中国にとってはかなり有利に働くのだが、これは単純に台湾が中国本土から近くて、アメリカからははるかに遠いという理由による。米中間で台湾への戦力投射が競争になれば、中国の楽勝は目に見えている。

・さらに、台湾をめぐる闘いでは、アメリカの政策家たちが中国本土の部隊に対して大規模な攻撃をしかけることをためらうはずだ。なぜなら彼らは、それが核ミサイルの撃ち合いにエスカレートしていくことを恐れるからだ。そしてこのような沈黙は、中国にとってさらに有利に働くはずだ。

・他にも、「台湾は近い将来において、中国に対して通常兵器による抑止を効果的に働かせることができなくなる」という議論も考えられる。するとアメリカの「核の傘」を台湾にかけるということになる。

・ところがこのアプローチでは問題を解決することはできない。なぜなら、台湾が中国に侵攻されてしまえば、アメリカが核戦争のレベルまで紛争をエスカレートさせることはないからだ。

・中国の台湾侵攻は、アメリカにとっては「水爆戦争を引き起こす」という高いリスクを冒すまでのものではない。台湾は、日本や韓国とは立場が違うのだ。したがって、アメリカにとって賢明な戦略とは「台湾まで核抑止を拡大しようとしない」というものになる。

・アメリカが最終的に台湾を見捨てるかもしれない2つ目の理由は、それがアメリカの意図しない米中戦争の勃発に容易につながる可能性のある、危険な「フラッシュ・ポイント」になるからだ。

・アメリカの政策家たちは、台湾の運命はあらゆる中国人にとって大きな懸念であり、もしアメリカが統一を阻止したかのように見えると、彼らが激怒する公算は大きい。

・ところがもし台湾と親密な軍事同盟を形成することになると、実際にアメリカは「中国人を激怒させる」ことになってしまうのだ。

・このような点から、強力な力を持った中国のナショナリズムでは、「アメリカのような大国が、過去に力の弱かった中国にどのような屈辱を与え、香港や台湾のような領土をかすめ取ったのか」ということが強調されることになる。

・したがって、台湾をめぐっての危機の勃発や、危機が戦争に発展するようなシナリオを想像するのはそれほど難しいことではない。


・結局のところ、中国のナショナリズムは、このような危機ではトラブルの源泉となるのであり、中国はどこかの時点で台湾を軍事的に併合する手段を持ち、それが戦争の可能性をさらに高めることになるのだ。

・冷戦期でも、現在の米中の安全保障をめぐる台湾の存在ほど、米ソ超大国の間において危険な場所は存在しなかった。

・台湾を冷戦期のベルリンに例える論者もいるが、ソ連にとってベルリンは「聖なる土地」というわけではなかったし、両陣営にとってもそれほどの戦略的重要性はなかった。

・ところが台湾は違う。


・戦争の発生しやすさや、「アメリカはいずれ台湾を守れなくなる」という事実を考えると、アメリカの政策家たちが最終的に「台湾を放棄して中国の強制的な統一を受け入れるほうが戦略的に合理的である」と結論づけるだけのチャンスが存在することになる。

・これらから言えることは、「アメリカは今後数十年間にわたって、台湾について一貫性のない考えを持つことになりそうだ」ということだ。

・まず一方で、アメリカは台湾を、中国封じ込めのための「バランシング同盟」の一部にしたいという強力なインセンティブを持っている。

・ところがもう一方で、台湾と密接な軍事同盟を維持することの利益は、時間を経るにしたがってその潜在的なコストよりも下がってしまう可能性があり、しかもその下がり方は大幅なものになりそうなのだ。

・もちろん直近ではアメリカは台湾を守るだろうし、戦略資産として扱うはずである。ところがこの関係をいつまで続けられるかについては、誰も答えることができないのだ。


・これまでの台湾の将来に関する議論は、そのほとんどが「アメリカは台湾に対してどのような行動するのか」というテーマを中心としたものであった。

・ところが当然のように、中国の台頭に直面した台湾に何が起こるのかは「台湾のリーダーたちや国民が、時間の経過と共にどのような政策を選択するのか」という点にも大きく左右されることになる。

・台湾の今後の最も重要な目標が「中国からの独立状態を維持すること」であることは明らかであり、これは次の十年間はそれほど難しいものではないだろう。そしてその主な理由は、台湾がほぼ確実にアメリカと密接な関係を維持するからであり、アメリカも台湾を守ろうとする意志と能力を持ち続けるからだ。

・ところがある時点に至ると、台湾の戦略状況が大きく悪化することになる。その主な理由は、米軍がその守りを支えようとしても、中国が台湾を侵攻できるような状況の実現が急速に近づくことになる公算が高いからだ。

・そしてすでに述べたように、長期的にはアメリカが台湾のために居続けてくれるかどうかは明らかではないのだ。

・このような不快な未来像に直面した台湾に残されている選択肢は3つだ。


・1つは独自の核抑止の構築である。核兵器は究極の抑止力であり、台湾の核兵力が中国の台湾攻撃の可能性を大きく下げることになるのは明らかだ。

・アジアにおけるバランス・オブ・パワーが決定的に不利な方向へシフトする前に、台湾が核抑止を達成するだけの時間は残されている。


・ところがここでの問題は、北京とワシントンの両政府が台湾の核武装に確実に反対する、ということだ。

・アメリカが台湾の核武装に反対する理由は、日本や韓国にその気にさせてしまうというだけでなく、アメリカの政策家たちが「同盟国が(最終的にはアメリカを巻き込む可能性もある)核戦争を始めるポジションにある」という考えを嫌っている点にある。

・大胆に言えば、台湾のおかげでアメリカへの大規模な核攻撃につながる紛争に巻き込まれるような状況に直面したいアメリカ人はいない、ということだ。

・もちろん中国は台湾が核抑止の能力の獲得については断固として反対するはずだ。そしてその理由の大部分は、こうなると北京政府が台湾侵攻を困難――もしくは不可能――にするものだ、と明確に理解していることにある。

・さらにいえば、中国は台湾の核武装が東アジアにおける核拡散につながると認識するはずであり、これによってこの地域における中国の影響力が低下するだけなく、核戦争につながるような通常兵器による戦争の勃発の可能性を上げると見なすはずだ。

・このような理由から、中国はもし台湾が核武装しようと決断すればその施設を攻撃するだろうし、台湾侵攻を実行する可能性もある。端的にいえば、台湾が核の選択を追及するのはもう手遅れであるように見えるのだ。

・台湾の2つ目の選択肢は、通常兵器による抑止である。米台両軍と比較して中国が明確な軍事的優位を保っている世界で、台湾は核兵器なしにどのように抑止の効果を発揮させればいいのだろうか?

・ここでの成功のカギは、中国軍を打ち負かすことを可能にすることではない。実際それは不可能だからだ。それよりも重要なのは、中国に勝利の獲得の際に大きな代償を支払わせるようにすることにある。

・いいかえれば、ここでの狙いは、中国が台湾を侵攻する際に、いかに長期の激しい闘いに巻き込むのかという点だ。もちろん北京政府は最終的には勝利するかもしれないが、それを「ピュロスの勝利」にさせるということだ。

・この戦略は、もし台湾が中国に対して、戦場での勝利の後に抵抗運動を続けることを約束できれば、さらに効果的なものになる。「台湾が新疆自治区やチベットのようになる」という脅しは、抑止を確実に支えることになる。

・この選択肢は、アルフレート・フォン・ティルピッツ提督が提唱し、第一次世界大戦の十年前にドイツが採用した、有名な「リスク戦略」に近いものだ。この当時のティルピッツ提督は、英海軍を海戦で打倒できるだけの強力なドイツ海軍を作ることはできないことを認めていた。

・ところが彼は、ベルリン政府が英海軍にそれなりのダメージを与えられるだけの力を持ったドイツ海軍を作れば、ロンドン政府はドイツとの戦いを控えることになり、これによって抑止することは可能だと考えた。

・さらにいえば、ティルピッツ提督はこの「リスク艦隊」が、対英外交においてドイツに一定の力を与えてくれるものだと考えたのだ。

・このような形の「通常兵器による抑止」には無数の問題があり、これが長期的に台湾に当てはまるものかどうかは極めて疑わしい。たとえばこの戦略には「アメリカが台湾と共に闘う」という前提が必要だ。

・ところがアメリカの政策家たちが、わざわざアメリカの負けそうな戦いを選び、しかもその過程で莫大な犠牲を払うことになるような戦争を意識的に選ぶとは考えにくい。

・そもそも台湾がそのような戦争を戦いたいと思っているのかどうかさえ不明だ。なぜならその戦場は中国ではなく、台湾の領土上になり、しかもそこには死者と破壊が充満することになるからだ。

・しかも台湾は、最終的には負けることになりそうなのだ。


・さらにいえば、この選択肢を追及することは「台湾が中国と常に軍拡競争を行う」という意味になり、両国を激しく危険な安全保障競争へと掻き立てることになる。

・いいかえれば、「ダモクレスの剣」は常に台湾の上に吊り下がっている、ということだ。

・また、中国が遠い将来においてどれほど支配的になるかを予測するのは難しいが、最終的に台湾が中国の猛攻撃に抵抗できないほど強力になることは、十分ありえる話だ。もし中国が超大国になってアメリカの台湾防衛のコミットメントが弱まったら、このような事態は確実に起こりうるだろう。

・台湾の3つ目の選択肢は、私が「香港戦略」(Hong Kong strategy)と呼ぶものを追及することだ。この場合、台湾は独立を諦めて中国の一部になるという事実を受け入れなければならない。そしてその主権の明け渡しのプロセスが、なるべく平和的なものとなるように努力し、北京からの自治権をなるべく多く残さなければならない。

・この選択肢は、今日の観点から見れば到底受け入れられるようなものではないし、この状態は少なくとも次の十年間は変わらないだろう。ところがそれより先の、中国が台湾を比較的容易に侵攻できるほど強力になった時点では、この選択肢が魅力的なものとなる可能性が高い。

・これらを考慮した上で、台湾は一体どうすればいいのだろうか?

・まず「核武装」だが、これはアメリカも中国も認めないために、不可能である。

・次に「リスク戦略」の形をとる「通常兵器による抑止」は、理想的な状態からはかけ離れたものだが、それでも台湾が困難なく従属できるほど中国が支配的ではなければ、合理的だといえる。もちろんこの戦略が効果を発揮するためには、アメリカが台湾防衛にコミット(もしろんこれは長期的に保証されているわけではないが)しなければならないのだ。

・中国が超大国になってしまえば、おそらく台湾にとって「事実上の独立を維持する」という希望は諦めなければならないだろうし、その代わりに「香港戦略」を目指すのは最も合理的だといえるのかもしれない。

・もちろんこの選択肢は魅力的なものではないのだが、ツキュディデスがはるか昔に主張したように、国際政治では「強きがいかに大をなし得て、弱きがいかに小なる譲歩を持って脱しうるか」が重要なのだ。

・ここまででお分かりのように、台湾がその独立を諦めなければならないかどうかというのは、主に「中国の軍事力が今後の十数年でどこまで圧倒的になるか」という点に左右されることになるのは明らかだ。


・台湾は時間を稼ぎ、政治的な現状維持を保つためなら何でもやるはずだ。

・ところが、もし中国が今後もその目覚ましい台頭を続けるのであれば、台湾が中国の一部に取り込まれるのは時間の問題だ。

・台湾がこのシナリオを回避できる唯一の状況がある。

・それは、今後の中国の経済成長の劇的な縮小であり、北京政府が深刻な政治問題を抱えて、国内に目を集中しなければならなくなる状況の出現だ。

・もしこのような状況になれば、中国は地域覇権を追及するどころではなくなり、アメリカは現在のような状態のまま、中国から台湾を守り続けることができる。

・実質的に、台湾が「事実上の独立状態」を維持するために最適なのは、中国が経済的・軍事的に弱体化する、というものだ。


・ところが台湾にとって不都合なのは、台湾には自ら働きかけてこのような状況を作り出すだけの影響力がないことだ。

・中国が1980年代に劇的な経済成長を始めた時、ほとんどのアメリカ人やアジアの人々は、これから始まる貿易やその他の経済面での交流によってすべての人々がリッチで幸福になれると思い、このニュースを大歓迎した。

・現在優勢な考え方によれば、中国は国際社会の中で「責任ある利害関係者」になる可能性があり、周辺国は何も恐れる必要がないことになる。台湾人の多くは、過去にこのような楽観的な視点を持っていたし、いまだに持っている人もいる。
・しかし彼らは間違っている。

・中国との取引を行って経済大国にする助けをすることにより、台湾は修正主義的な視点を持った、急成長する怪物ゴリアテを生み出す手伝いをしてしまっているのであり、このおかげで自らの独立を終わらせ、中国の一部になるかもしれないのだ。

・まとめて言えば、強力になった中国は、台湾にとって単なる「問題」ではなく、「悪夢」そのものなのだ。


以上

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論文の内容を端的にまとめれば、

・台湾は、「事実上の独立状態という現状を維持したい」と希望している。
・中国は、台湾の独立を認めない。
・中国にとって、台湾を統一することは、民族主義的アイデンティティの中核をなすものの一つであり、妥協は許されない。
・米国は、台湾を主権国家として認めておらず、「一つの中国という政策を完全に支持」している。
・台湾は、台頭する中国に直面しても、事実上の独立状態を維持することができるか。
・大国政治の理論によれば、全ての大国にとって理想的な状態は、「世界中で唯一の地域覇権国」となることである。
・したがって、中国は、地域覇権国となりアジアを支配することを目指す。
・そのために、中国が台湾を統一することには戦略的合理性があり、強力なインセンティブが働く。
・米国は、台湾に安全を提供することができるか。
・米国は、中国の台頭を阻止するために、周辺国と米国主導のバランシング同盟を結成し対抗する。
・しかし、米国は、台頭した中国に対し、通常兵器による抑止を効果的に働かせて台湾を守ることができなくなる。
・また、米国は、米中核戦争のリスクを冒してまで、台湾に核抑止を拡大しない。
・よって、最終的に、米国が「台湾を放棄して中国による統一を受け入れるほうが戦略的に合理的である」と結論づける可能性はある。
・台湾の選択肢は3つある。
・1つ目は、核武装であるが、これは米中が認めないため、不可能である。
・2つ目は、通常兵器による抑止であるが、これは中国が超大国にならず、米国が台湾防衛に強く関与し続ける限り、合理的である。
・3つ目は、台湾が独立を諦めて中国の一部となることを選ぶ「香港戦略」であるが、中国が超大国となり、米国が台湾防衛への関与を弱めたときは、合理的である。
・台湾が、今後も、事実上の独立状態という現状を維持することができる唯一の状況は、中国の経済成長が劇的に縮小し、国内が政治的に混乱して、経済的・軍事的に弱体化した状況である。
・しかし、台湾は、中国と取引を行って、中国を経済大国にすることにより、逆に、自らの独立を終わらせ中国の一部になろうとしている。

ということになろうかと思います。

要するに、ミアシャイマー教授は、「中国がアジアにおける地域覇権国を目指して超大国化したときは、米国は、中国による台湾統一を受け入れることが戦略的に合理的であり、台湾は、事実上の独立状態を諦めて中国の一部とならざるを得ない。この状況を防ぐ唯一の方策は、中国の経済力を劇的に縮小させて、経済的・軍事的に弱体化させることである」と論じているわけです。

私としては、現実にはこのように単純な事態にはならないと考えますが、理論上はあり得る事態といえます。

いずれにしても、中国との経済戦争が既に始まっていることがよく理解できる論文だと思いましたので、TPP問題等を考えるときの参考になればと思い、紹介させていただきました。

twitterで皆様のご意見をお待ちしています。

リアリズムを学ぶ
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2013年8月4日日曜日

護衛艦あきづき

本日、名古屋港ガーデン埠頭に停泊中の海上自衛隊第1護衛隊群第5護衛隊所属の新型汎用護衛艦あきづきに乗船し、見学及び撮影。弾道ミサイル対処中のイージス艦こんごうの対空防御補完を任務とする。


















2012年8月12日日曜日

書評「世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう」(奥山真司著)

戦略的「哲学のすすめ」



本書でいう、捨てるべき「武器」とは何か?

それは、ピラミッド型の「戦略の階層」で最低レベルに位置づけられる「技術」である。

「戦略の階層」とは、個人が人生をコントロールするために必要な「戦略」を階層化し、そのレベルを軍事戦略をモデルに表現した概念であり、具体的には、頂点である「世界観」レベルの下に、「政策」>「大戦略」>「軍事戦略」>「作戦」>「戦術」>「技術」のレベルが位置づけられたものである。

著者によれば、国家指導者を含む日本人の多くは、例えば「もの作り日本」というスローガンのように、最低レベルの「技術」レベルの「武器」に固執しているため、最高レベルの「世界観」を自己の人生の中心に据えて、徹底した個人主義とリアリズムに基づき、他人との生存競争に臨んでいる欧米人に有効に対抗することができないのだという。

そして、このような「竹槍でB29と戦おうとしている」現状を打破し、環境を変化させ、日本人がその人生を成功に導いていくためには、一旦は、ハードウェアとしての「武器」を捨て、抽象度の高いソフトウェアとしての「世界観」を確立し、その頂に立って、具体的な人生戦略を再構築すべきであるとしている。

つまり、本書の趣旨は、”人生においては、各個人が「技術」レベルの貧弱な武器ではなく、「世界観」レベルの強力な武器を手にして戦え”ということにあり、単に「武器を捨てる」ことではない。

また、その方法論としては、強力な「世界観」を確立するためには、平社員であっても経営者のように考えること、つまり、物事を最高レベルからコントロールするイメージを持つことが必要であり、「世界観」の実現に当たっては、具体的な目標を定めて行動する「順次戦略」及び成功を導くための基礎訓練を習慣化した「累積戦略」の両方が必要であるという。

以上のとおり、本書の本質は「哲学のすすめ」にあり、数多の自己啓発本のような「戦術」「技術」レベルのテクニックを説いたものでも、目新しい「武器」を紹介するものでもない。

教育制度における小学校英語必修化に象徴されるように、国家規模で繰り返される日本人の「技術」レベルへの固執という必敗の戦略思考を必勝の戦略思考へと転換するために、私は、この「逆転の発想(最低レベルからのボトムアップ→最高レベルからのトップダウン)」を他の多くの読者の方々にも学んで実践していただきたいと、願う。

追記 本書を読んで、Mac OSの壁紙がデフォルトで「銀河系」に設定されていることの意味と、アップルが世界一の企業であることの必然性を理解することが出来た上、世界トップレベルの思考レベルの高さに慄然とした(ソニーVAIOの壁紙は何か?)。

2011年10月17日月曜日

『横綱論 Part2 「運」を上げる方法』メモ





ブログ「地政学を英国で学んだ」(奥山真司)〜横綱論2がいよいよ発売開始〜
http://geopoli.exblog.jp/16436560/

・戦略というのは、結局のところは「どうするのか」という「判断力」に関すること。

・本書がこれから述べていくのは、「運力向上学派」の考え方。その理由は、私自身が、人間の「判断力」を身につける上で、この学派の考え方が最も根本的で手っ取り早いものだと考えているから。

・教訓 世界は変わらないが、自分は変えられる。(某大司教)

・自分の運は、すべて自分に原因があるのだ。

・「環境」と「体」と「脳」を”スッキリ”させる。三位一体。

・ものごとをよく観察してみると、この世界には、人間やモノに限らず、あらゆるものはレベルが上がってくると、激しさやケバケバしさが抜けて、マイルドでスッキリした方向に向かう、という傾向がある。高級品はマイルドなのだ。

・「戦略の究極の三原則」>①冷静であれ、②柔軟であれ、③選択肢を持て

・ジョークや笑いが出てこないような人は、自分の状況を客観視できるような頭の良さを持っていないことを実質的に証明してしまっているようなもの。

・冷静な人物は機嫌が良い。そのような人物はジョークや笑いを交えながら多くの選択肢を考え、その中から最適な対処の仕方を柔軟に考えることができる。

・「バリアーを張る」というのは、究極的に言えば「自分の機嫌(心のスッキリした状態)を歯を食いしばっても守る」ということ。外の環境の変化にも簡単には惑わされなくなる。

・運を上げようと思うのであれば、運の良い人の身体の状態、つまり背筋を伸ばした「スッキリとした姿勢」を真似すればいい。

・「累積戦略」は、軍事戦略の中で「土台」のような役割を果たしており、「順次戦略」は、その土台の上に建てられる「建屋」のような性格を持っている。

・運を上げるのもこれに近い。上の七つの方法のうちのどれか一つでもいいから、それを毎日粛々とやり続けることにより、そこから累積的な効果がたまる。

・「努力」ではない「地道な累積作業」というべきものを、楽しみながら淡々・粛々とこなしていただきたい。

・オススメするのは「三位一体のスッキリ」であり、まずは手っ取り早く、自分の環境や身の回りから(掃除やゴミ捨てなど)地道に始めること。

・<最重要>「運を上げる七つの方法」(p.19)※奥山真司流横綱道秘伝の法

2011年10月9日日曜日

書評「覇権支配システムー力の均衡と世界の民主化ー」(吉田亮太)

「世界の民主化にノーを」


本書の著者である吉田亮太氏の主張を要約すれば、


「リアリズムにとっては、新たな世界大戦を予防し現在及び将来の世界平和を維持するために、世界の覇権国間のバランス・オブ・パワーを適切に管理することが最も重要な目的である。この目的の前では、リベラリズムの主張する自由民主主義の発展や人道問題などは『コーヒーショップの泡』のような瑣末事に過ぎない。しかし、民主主義国の覇権国である米国は、民主主義国としての政体の制約により国家のパワーを自由に行使することが出来ない状態にある。この民主主義国の政体上の制約は、非民主主義国と勢力均衡を図る上で大きな弱点となっている。したがって、米国をはじめとした民主主義国を政体の制約から解き放ち、国家のパワーを自由に行使できる存在に変化させなければ、世界のバランス・オブ・パワーは危険な状態に陥るであろう」


というものである。


つまり、吉田氏は「世界の民主化」を「国家のパワーの自由な行使を妨げるもの」と認識し、そのことが結果的に世界のバランス・オブ・パワーをアンバランスな状態に変化させて、世界の覇権国家間における新たな世界大戦を招来することとなると危惧し、「世界の民主化にノーを」唱えよと主張しているのだ。

本書で示された吉田氏の認識を踏まえれば、日本は、覇権国である米国の庇護の下で東アジアにおける勢力均衡に汲々とするほかない立場である。


だが、肝心の米国の覇権国家としてのパワーが相対的に低下しつつある現状の中で、東アジアにおけるバランス・オブ・パワーの変化を企図する中露の攻勢を前にして、今後日本は如何に対処すべきか再考する余地は十分にあろう。

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「覇権支配システムー力の均衡と世界の民主化ー」(吉田亮太著、ユニオンプレス刊)

目次
はじめに
まえがき 「冷戦思考」批判を超えて
第1章 議論の諸前提
第2章 覇権とは何か
第3章 ハードパワー
第4章 ソフトパワー
第5章 力の評価と外交について
第6章 国際法廷
第7章 覇権に対応する
第8章 各地域のケース
第9章 世界の民主化にノーを
第10章 「新しい中世」の中で
あとがき 日本における政治論の制約と本書の立場について
索引


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